「人の正義と神の義」(出エジプト2:12〜25節)
モーセはヘブル人という自覚はありましたがエジプトの王族として不都合なく生活していました。しかし同胞への仕打ちに義憤にかられエジプト人を殺害してしまったことを機に、モーセの人生は暗転します。彼流の正義を行ったもののヘブル人からは拒絶され、エジプトとの関係には亀裂が生じ、王に殺されそうになり、モーセは国外へ逃亡します。その昔ヨセフが宰相の頃、ヘブル人はエジプトに歓迎されましたが、ヤコブの子孫が勢力を増すにつれてその関係は冷え、ついには根絶やしにされそうになりました。イスラエルの民が歴史的に体験した出来事をモーセは個人の歩みで追体験することになります。逃亡したミデヤンの地では祭司の娘達が羊飼いに追い払われたのを看過できず、彼女達を助けました。そこで行った彼の正義は受け入れられ、祭司の娘チッポラと結婚し、彼は平安を得ました。生まれた男子にゲルショム(寄留者の意)と名付けますが、外国人でありエジプトにも居場所のないモーセの自覚から命名されたのでしょう。ミデヤン荒野での40年の生活は、後にイスラエルの民を率いてカナンを目指すリーダーとなるための資質を培いました。安定した生活を送っていた彼に、神はエジプトへ向かうよう命じられます。エジプトで「誰があなたをさばきつかさにしたのか」とヘブル人に非難されましたが、モーセは後の生涯この問いにさらされ続けることになります。神に召され、神の民を救う為に命をかけているにもかかわらず、受け入れようとしない人々に傷つけられながらモーセは指導者として歩み続けなければなりませんでした。人の正義は時に衝突・争いの原因となり、人を破滅させるものです。しかし十字架によって示された神の義は人を救い、命をもたらすものです。神の義を行うためにモーセは神に整えられ用いられる器へと訓練されていきました。80歳からモーセの新たな人生が始まったように、私達もこれまでの様々な苦しい体験を積み重ねていくことは神のご計画の中で整えられていくため必要なことだったのです。聖書の歴史の中で起こる出来事は、私達の人生にも同じようなことが起こると鑑み、聖書を学ぶ中で生きる知恵をいただくことができるのです。
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