「何度赦すべきか」マタイ福音書18:15〜35
イエスは「7度の70倍」赦しなさい、と話されました。これによく似た表現が創世記4章にあります。「カインのための復讐が7倍であれば、レメクのための復讐は77倍」復讐という、人間の憎しみと怒りを象徴する数字を取り上げてイエスは“限度なく”赦しなさいと話されました。普通の人間が生涯働いても到底稼げない金額です。その国家予算の何年、何十年分もの負債を全て免除してもらうなど、あり得ない話です。主人は「どうか待って下さい、きっと全部お返しします」という言葉を信じたわけではありません。返済できないことを百も承知で、あわれみにより赦したのです。赦された方はただ感謝、絶望的な破産の人生から、万死に値するような迷惑をかけたことを詫び、新しく生まれ変わろうとでも思ったことでしょう。しかし百デナリ貸していた仲間がお金を返せないと言うので、彼を牢に入れて財産を差し押さえて怒りました。600億円の桁外れの負債を帳消しにしてもらった人が、10万円返済できない友人の首をしめて脅しあげたようなものです。それを知った主君は怒って、免除の取り消しをしました。途方もない負債を全て赦してもらったのに、その事がこのしもべの生き方に何の変化も起こしていなかったのです。「7の70倍赦しなさい」と言われると、そんな無茶な命令は自分にはとても無理、と思います。しかしこのたとえ話でわかるのは、赦された者であっても人を赦すことが難しいということです。自分では返済不可能な負い目をイエスの十字架により帳消しにされた、その恵みをしっかり受け取っている人は「7の70倍」までも神様が一方的に赦して下さったという神のあわれみの深さを知り、「赦してもらう」ことの困難さを身にしみて知っているはずです。そして天の神様は兄弟姉妹のことも同じように愛しておられる、という視点に立つとき、無理解から来る怒りと憎しみからその人を理解してみようとする心の動きに変えられるのです。
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