『ダビデ再びペリシテへ』サムエル上27章
24章、26章でサウル王とダビデ討伐軍は帰って行きましたが、ダビデは再度サウルの追手が来ることを怖れ、600の兵とその家族とともにイスラエルの敵であるペリシテへ移動することを決断しました。10年も続く長い逃亡生活に、部下たちからも不平不満が出ていたことでしょう。ダビデは重要な判断を下す時、主に祈り、主に伺う人でしたが、今回はそれがありません。ダビデは21章でペリシテのアキシ王のもとに逃れましたが、ここに安全な居場所は無いと判断すると気が狂ったふりをして城外へ出されたという出来事がありました。にもかかわらずアキシ王はダビデたちを受け入れ、かつてのイスラエル領チクラグの町が与えられ、ダビデはここを本拠とします。600人とその家族を養っていくことは容易ではありません。ダビデは略奪隊を編成し、イスラエルでもペリシテでもない集落を襲い、戦利品を得て財産を増やします。アキシ王には「ユダを襲った」などと嘘の報告をして警戒心を解き、生き残った者が真実を告げないよう女性も子どもも皆殺しにします。ペリシテで生きながらえるための方便、工作は神から出た知恵ではなく、政治家としての人間ダビデの策略です。自分たちが生き残るためには偽りも非情なことも辞さないダビデ。ペリシテでの1年4ヶ月の生活の中でアキシ王からは信頼され護衛官まで任せられますが、信仰の低調はしばらく続きます。不利な状況を忍ぶために世俗の手段と計略で保身を図ると、自分のついた嘘で立場を危うくするという負の連鎖から脱出できなくなります。そこにはかつての信仰の勇者ダビデの姿はなかったかもしれません。チクラグの町という領土は得ましたが、神の守りを手放したために安息の地とはなりませんでした。主に伺い求める信仰を取り戻したのは更なる危機の際(29章)でした。
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